エンディングノートの話、親に伝えるには?自然な切り出し方ガイド
エンディングノートの作成は、ご自身の万が一に備えるだけでなく、ご家族が今後のことについて共通認識を持つためにも大変有効な手段です。特に、離れて暮らす親御さんの将来について考える際、親御さんの意向や希望を把握する上で、エンディングノートの存在を知ってもらい、場合によっては作成を勧めることは非常に重要です。しかし、「親に将来の話やエンディングノートのことをどう切り出せば良いのか分からない」「親が嫌がるのではないか」といった不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、親御さんにエンディングノートについて自然に話し始めるための具体的なヒントをご紹介します。親御さんへの配慮を忘れずに、円滑なコミュニケーションを図るための参考にしていただければ幸いです。
なぜ親との「切り出し方」が重要なのでしょうか?
エンディングノートは、人生の終盤におけるご自身の希望や大切な情報を記しておくものです。この話題は、どうしても「老い」や「死」といったテーマに触れることになります。そのため、親御さんの気持ちに寄り添い、デリケートな話題であることを理解した上で、どのように話を始めるかがその後のコミュニケーションに大きく影響します。
一方的に「エンディングノートを書いてほしい」と頼むような形では、親御さんがプレッシャーを感じたり、「もう先は長くないと思われているのか」と傷ついたりする可能性も考えられます。親御さんの尊厳を傷つけず、かつ必要な情報を共有するための第一歩として、話の切り出し方は丁寧に行う必要があります。これは、ご家族間の信頼関係を維持し、将来的な話し合いをスムーズに進めるためにも欠かせない配慮と言えるでしょう。
エンディングノートの話を自然に切り出すための具体的なヒント
では、親御さんにエンディングノートの話を持ちかける際、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。いくつかの具体的なヒントをご紹介します。
1. 話すのに適したタイミングを選ぶ
親御さんの体調が良いとき、気分が落ち着いているときなど、心身ともにリラックスできるタイミングを選びましょう。慌ただしい時間や、親御さんが何か別のことで気を取られているときを避けることが大切です。一緒にテレビを見ているときや、散歩中など、何かのついでに自然な流れで触れてみるのも一つの方法です。
2. 何かを「きっかけ」にする
直接的に「エンディングノートについて話があるんだけど」と切り出すのではなく、何か別の出来事をきっかけにする方が話しやすい場合があります。
- テレビやニュース: テレビで終活や相続、介護に関する話題が取り上げられた際に、「こういうのみると、いろいろ考えさせられるね」などと感想を共有することから始めてみる。
- 知人や親戚の話: 「〇〇さんのところで、エンディングノートの話が出てね」「最近、知り合いがエンディングノートを書き始めたらしいよ」などと、第三者の話を例に出す。
- ご自身のエンディングノート作成: ご自身がエンディングノートを書き始めたことを伝え、「自分も書き始めてみたんだけど、いざ書こうとすると分からないこともあって」などと、相談を持ちかけるような形で親御さんの関心を引く。
- 健康や身の回りの整理: 健康診断の結果や、家の片付けなどをきっかけに、「今後のために、身の回りのことや大切な情報を整理しておくと安心だね」といった話につなげる。
3. 伝え方のスタンスに配慮する
話し始める際の言葉遣いやスタンスは非常に重要です。
- 「自分のため」「家族みんなのため」と伝える: 親御さんのためだけに書いてほしい、という一方的な頼み方ではなく、「お父さん(お母さん)が何かあったときに、私たち家族が困らないように、必要な情報だけ共有しておいてもらえる助かるなと思って」「私のほうも、将来に向けて自分の情報を整理しておこうと思ってるんだ」など、自分自身や家族全体の安心につながるという視点を伝える。
- 「一緒に考える」「情報を共有する」というスタンス: 「書いてください」とお願いするのではなく、「今後のこと、一緒に少し考えてみない?」「どんなことが書いてあるか、見てみようか?」など、親御さんと一緒に向き合う姿勢を示す。
- 親御さんの意向を尊重する姿勢を示す: 「書く内容は、お父さん(お母さん)が書きたいことだけで大丈夫だから」「無理強いするつもりはないよ」といった言葉を添え、親御さんの気持ちを最優先することを伝える。
- まずは簡単な項目から提案する: 最初から全てを網羅するエンディングノート全体の完成を目指すのではなく、「まずは、お医者さんの連絡先とか、お友達の連絡先とか、いざという時に家族に知らせておきたいことだけ、どこかに書き留めておいてもらえるだけでも安心なんだけど」など、負担の少ない項目から始めてみることを提案する。
4. 事前の準備をしておく
親御さんの性格や関心事を事前に考慮し、どのようなアプローチが一番受け入れられやすいかを考えておくことも役立ちます。また、書店などで入手できる様々な種類のエンディングノートのサンプルや、インターネット上の情報をいくつか準備しておき、「こういうものがあるみたいだよ」と実際に見せながら話すと、具体的なイメージが湧きやすく、話を進めやすくなる場合があります。
もし親御さんが難色を示したら?
せっかく勇気を出して話しても、親御さんがすぐに前向きな反応を示さないこともあるかもしれません。「まだ早い」「そんなこと考えたくない」といった反応があった場合も、そこで話を終わりにせず、以下の点に留意しましょう。
- 無理強いはしない: 親御さんの気持ちを尊重し、無理強いは絶対にしないようにしましょう。
- すぐに結論を出そうとしない: その場で全てを決定する必要はありません。まずは話題にすること自体に意義があります。
- 一度保留し、別の機会に: その場では一度話を切り上げ、「気が向いたら、またいつでも言ってね」「また、何かあればいつでも話を聞くから」と伝え、別の機会に改めて、あるいは別の角度から話をしてみるのも良いでしょう。
- 最低限の情報共有から: エンディングノートという形式にこだわらず、「何かあったときに、これだけは知っておいてほしい」という情報(例:かかりつけ医、お薬手帳の場所、実印の場所など)だけでも共有してもらえるようにお願いしてみるのも現実的な方法です。
家族で協力することの重要性
親御さんとの大切な話し合いは、一人で抱え込まず、兄弟姉妹など他のご家族とも事前に相談し、協力して進めることも有効です。複数人でアプローチすることで、親御さんも安心感を持てる場合がありますし、それぞれの立場から異なる切り口で話ができるかもしれません。
まとめ
親御さんにエンディングノートや将来の希望について話すことは、ご家族にとってデリケートでありながら、非常に重要なコミュニケーションです。話の切り出し方一つで、その後の関係性や話し合いの進み方が大きく変わる可能性があります。
親御さんへの思いやりと配慮を最優先に、適切なタイミングを選び、自然なきっかけを作り、丁寧な言葉遣いで接することが成功の鍵となります。「書いてもらう」という結果だけを急ぐのではなく、親御さんの気持ちに寄り添いながら、ともに将来について考える姿勢を示すことが大切です。完璧を目指さず、まずは話題にすること、一歩踏み出すことから始めてみてはいかがでしょうか。
エンディングノートに関するより詳しい情報や、具体的な書き方については、当サイトの他の記事もご参照いただければ幸いです。